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体験談

視線恐怖-20代女性、会社員

 

 わたしが人の視線が気になりだしたのは、高校生になってからです。当時、郷里の女子高まで1時間近く電車で通学していました。その頃は少し太り気味であったのを、あるとき友達にからかわれてから、人目が気になるようになりました。電車の中では小説などを読んでいましたが、ふと目を本から逸らして、前の人を見ると、視線が合って気になりだしました。もしかすると、自分の容貌のことを笑っているのではないかなどと考えると、視線があざけっているように思えて居心地が悪くて仕方がありませんでした。そういうことが何度もあって、とうとう人と向かい合って座席に座ることが出来なくなりました。そして、1時間近く立ちっぱなしで、しかも、人と目を合わせるのが嫌で本を見っぱなしということになりました。この頃、少女雑誌か何かの悩み相談で相談したことがありました。回答によれば、自分が笑われていると思って相手を見ると、相手のちょっとした仕種でも、そう思えるものなのだ。だから、主観の問題で、実際に相手がそう思っていることはほとんど無いというものだったと思います。わたしも、この回答には納得して、そう思うようにしていました。しかし、それでも電車で座席に座るのには抵抗を感じていました。
 
 高校を卒業して短大に進み、秘書の専門学校を出て今の会社に就職しました。秘書という仕事に対する憧れがありましたが、心の底には余り人と目を合わせて仕事をするようなことが少ないという気持ちがあったと思います。視線恐怖が自分の人生の選択にも影響していました。ところが会社に入って配属されたのは総務でした。総務を経験してから秘書というパターンが多いと聞いていましたから、その一ステップだろうと思いました。最初の1年は部内の経理のような仕事でしたが、そのうちに庶務の仕事に回されました。庶務というのは仕事の範囲が広く、社員の出張旅費の計算もあれば、社宅の世話もあるというように社内のよろずやのようなものです。会社の福利厚生の制度などが変わると、各部署の担当者を集めて説明しなければならないという場面も増えて来ました。新人で慣れないということもありましたが、こうした場でおどおどしていると何か嘲られているような気がして落ち着かなくなりました。何十人もの人を前にして、一斉に視線を向けられると、不安と恐怖でいたたまれない気持ちになって説明もしどろもどろになってしまうこともありました。上司からは、「相手の目を見て、しっかり説明しなさい」と注意されるのですが、とても、そんなことは出来ません。あるとき、勇気を出して、皆を睨み返すようにして説明をしたことがあるのですが、社員から視線がきついと注意を受ける有様で、自分ではどうしたら良いのか途方に呉れてしまいました。上司には、自分はこういう仕事には向かないので秘書に回してくれと直訴したことがあります。しかし、上司から、「あなたのようにちゃんと相手を見ないで話す態度は相手に不快感を与える。いまのままではお客様と接する機会が多い秘書の仕事は無理だ」と言われてショックを受けてしまいました。このままでは仕事を続けられないと悩んでいたときに、メッカジャパン(注:お茶の水メンタルクリニックの前身)が主催するフォビア克服講座を見つけ、これに参加しました。毎週週末に文京区役所がある建物の中の会議室に色々なタイプの悩みを持っている方たちが集まり、互いの悩みを打ち明け、どうしたら解決できるのかを自ら発見するという講座でした。最初に、山村先生からフォビア(恐怖症)がなぜ起きるのかについて分かり易く説明がありました。そのあと、なぜ、こうして色々なタイプの人を集めて講座を開くのかということについて興味深いお話がありました。そこにはあがり恐怖の方や赤面恐怖の方、そして、わたしのように視線恐怖の方もおられました。先生がおっしゃるには、悩むタイプは違うけれども、フォビアを発祥するメカニズムは皆同じだというのです。メカニズムが同じなのに、なぜ、ある人はあがることに恐怖し、赤面することには恐怖しないのか、赤面することには恐怖しても、なぜ、視線には恐怖しないのか。つまり、あることには恐怖するのに、ほかのことには恐怖しないという不思議の中に解決の道がある。それを分かって貰うために多くのタイプの人に集まっていただいているというのです。初めは、この説明を聞いても、それがどういうことなのか理解できませんでした。わたしの心の中は、なんとしても視線恐怖を克服したいという一念ばかりが支配し、ほかのあがり恐怖や赤面恐怖などには全く関心が無かったからです。ですから、こうして色々なタイプの人が集まっているということ自体に違和感を覚えていました。
 
 講座は4週間にわたってありました。2週間目に参加者がそれぞれの体験を発表しました。中には、いままでの辛かったことを涙ながらに話す方もいて、話を伺いながら、わたし自身も辛くなることがありました。わたしの悩みはまだましなほうだとも感じました。この日は、全員の話を聞いてから、なぜ、そうした苦しみに陥ったのか、話を伺っただけでは分からなかった点について質問をしました。先生から、次週は「なぜ、ほかのことについて恐怖を感じないのか、を中心にお互いに質問をしてください」とご指示があって、皆、ええ?っと首をかしげてしまいました。なぜ、恐怖に陥ったのかについては先生の講義もあって分かったのですが、なぜ、恐怖に陥らないのかは考えても分からない気がしたのです。3週目の講座のときには、最初、誰からも発言が無く、先生が指名する形で進んでゆきました。先生が、赤面恐怖の方に、「あなたもあがることはあるでしょう。では、なぜ、あなたはあがり恐怖にはならないのですか?」と質問します。すると、その方は、「あがるってことが怖いというのがよく分からないのです」と言います。すると、あがり恐怖の方が、「ええ? あなたはあがって困ったことって無いのですか?」と質問します。赤面恐怖の方が、「いや、わたしだってあがるのは嫌ですよ。だけど、それが怖いというのがよく分からない。だって、あがることなんて誰にでもあることでしょう」と答えるというように進んでゆくのです。面白いと思ったのは、あがり恐怖の方が、こんどは赤面恐怖の方に向かって、「赤面だって皆あるんじゃないですか。わたしだって赤面しますよ。赤面すれば、自分だって嫌だと思うこともあるけれども、恐怖するということは無いですね。なんであなたが恐怖するのか不思議ですね」と言って、次々と議論が発展してゆくのです。
 
 こうしたやりとりの中で、わたしは多くの方が、若い頃にやはり視線が気になって困ったことがあったとおっしゃったのには驚きました。中には、人の視線を永い間避けていたという方もおられました。こうなると立派な視線恐怖の予備軍だと思うのですが、この方はいつの間にか、そういうことは自然に無くなったといいます。わたしは、若い頃にやはり視線が気になったという方一人ひとりに、「なぜ、恐怖に発展しなかったのでしょう?」と繰り返し質問しました。中には、わたしが少女雑誌から得た回答と同じようなことを言う方もおられましたが、一番多かったのは、「視線が合えば、やはり不快だし、色々な感情が湧いてくる。しかし、それはそういうもので仕方が無いと思っているからではないか」ということでした。これは実に大きなインパクトをわたしに与えてくれたと思います。つまり、視線が怖い、あるいは不快だと思うのはわたしばかりでは無かったということを知ったということです。わたしは、まるで自分ひとりがこういう苦しみを抱え込んでいるような錯覚を起こしていたのだと思います。視線を恐れるのは異常なことだと思い込んで、当たり前のことだと受け入れることが出来なかったのです。そして、それをあってはならないことだと無理な闘いをしていたのです。わたしは、この第3週目の講座が終わる頃には、何か永い間の悩みの暗闇に明るい日差しが差し込んできたような開放感を感じていました。おそらく、ほかの方たちも同じだったと思います。第4週目の最後の講座では、それぞれがこの講座で何を学び、これを今後にどう生かしてゆくかなどを話し合いました。ほとんどの方が、この講座で克服のきっかけを掴んだと言っておられました。
 
 わたしは、この講座を受けてから、人と目が合って、嫌な感情が湧いてくると、この講座で遭った人たちが言っていたことを思い出しました。そして、心の中で、「そういう感情もあるよね」と言い聞かせるようにしました。すると、今まで、その嫌な感情と闘っていたことが馬鹿らしくさえ思えて来たのです。とは言っても永い間染み付いた視線恐怖ですから、たちどころに克服というわけには行きませんでしたが、あるとき、上司から、「最近、表情が穏やかになったね。何か良いことでもあったのか」と言われたときには、ほんとうに心から喜びが湧いて来ました。それまで、恐怖で張り詰めていた心が開放された証拠だったのです。このときの嬉しかったことはいつまでも忘れることが出来ません。この喜びをお伝えしたくて、先生にお礼のお手紙をお出ししたところ、この体験記を書くことを勧められました。わたしのつたない経験が何かのお役に立てればと思います。

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